舌が入ってくる、明太子みたい、柔らかい…
舌が入ってくる。
どうしていいかわからない、なすがまま。
すると「舌吸って❤︎」と。
たった一回の口づけで童貞処女であることを悟ったかのよう…完全にバレている…
「お言葉に甘えて」
どんどん吸っていく。
どんどんしゃぶっていく。
どんどん舐めていく。
不思議な食感。
それはまるで「明太子」と「たくあん」と「数の子」を合体させたような食感。
すると矢継ぎ早に「下唇」が口の中に入ってくる。
下唇のシワシワの食感が伝わってくる。
そして流れるように正面から舌が入ってくる。
「舌で握手」
「何度も舌同士で握手していく…」
しかし…
どんどん摩擦が強くなっていく。
潤いがなくなっていく。
乾いていく…。
「全然集中できない」
サッと尾を引くようにディープキスを辞めた風俗嬢の方…
その時、
ハッと気づいた。
「もしかして唇がちょっとベコベコしてたから…」
「絶対そうだ」
「絶対そうに違いない」
悟った。
「唇を徹底的にプルンプルンにしないといけない」
そう悟った。
なぜこんなことになってしまったのか、
おそらく…
♦︎♦︎♦︎
「当日急いでリップクリーム塗って行ったから」
「今日行くしかない」
心の準備、そして目当ての風俗嬢の方の出勤、全てがバッチリはまっていく。
「今日だ、今日絶対に行くしかない」
以前から写メ日記を見ていて「絶対にこの風俗嬢の方にする」そう決め込んでいた風俗嬢の方が…
「今日出勤しているんだ」
「すなわち今ほとんど裸で待ってるっていうこと…」
「しかも今日は24時まで出勤している」
「現在待機中の文字がずっと点滅している」
「しかも今日は雨で閑散日」
「今日予約せずにフリーで直接行ったら当たる」
「絶対に予約せずに店頭で指名できる」
決まった。
その前にあることに気づいた。
「唇が…」
「唇が少しガサついている…」
今日行こうと決意した瞬間、重大なことに気づいた。なんと、唇がガサガサなのだ。
しかし、「今日行くしかない」胸の中でそう騒いでいる。
「金払ってるんだからそんなの我慢しろ」そんな利用者になりたくない。唇プルプルにしないとやっぱり失礼だ。その感覚がつのっていく。
「もしかしたら今すぐリップクリームでプルンプルンになるかも…」
それに託すしかない。明日じゃない。今日だ。今日行く必要がある。今日しかない。どんどん心は決まっていく。
「しかしリップクリームというもの自体がない」
完全に芋だ。リップクリームは買ったことはある。しかし一回使ってもう使わなくなるパターンが多かった。唇ガサガサでもどうでもよかった。しかし「今から風俗に行く」というのに直面した瞬間、自身が芋であることを思い知らされていく。
「今までいかに身だしなみを整えてこなかったかどんどん身だしなみの課題が押し寄せてくる。しかし…」
「唇付けた指を差し出せるほど清潔な唇に、
「今日を機に、生まれ変わる!」
「今日こそが絶好の機会」
「今日、己の芋を剥いてやる」
「今日いまこの瞬間に生まれ変わってやる」
決まった!
「今からコンビニだ!」
「いざリップクリーム購入へ!」
残り時間は迫っている。
閉店時間は24時。
しかし1時間前に入店するとして、それまでにまだ9時間ぐらいある。
しかし、午後の9時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。
「今から塗り始めればギリギリにプルンプルンになってくれるかもしれない」
「悠長にドラッグストアまで遠出して一番凄そうなリップクリームを選んでいる時間はない」・・・
「コンビニに到着」
選んでいる時間はない。
より凄そうなリップクリームを選んでいく。
「これだ!」
「はい帰宅帰宅帰宅」
「速攻で直帰」
帰宅して…
「よし早速速攻で塗り塗り」
「え!?いきなりプルンプルン…」
「舐めたい…」
自分で自分の唇舐めたいと本能的に思ってしまうほどなんだかすごくプルプルになり始めた。
「これなら今日いけるかもしれない…!」
•
•
なんと8時間でそこそこプルンプルンに。
そしていざ目当ての風俗嬢の方が勤務するソープランド店へ…
「唇ガサついてプレイを楽しめない…」
突貫工事的にプルンプルン化した自身の唇はキスを重ねていくうちに化けの皮が剥がれていった。
最初はプルンプルンしていたのにどんどん乾き、そしてどんどんベコベコになっていった。
そしてディープキスをしながらあることに気づき始めた。
風俗嬢の方の口がどんどん乾いていって、気持ち良くないキスだと思われていて、どんどんライトなキスになっていて、どんどんキスが気持ち良くなくなっていった。
そして最後にはどんどん塩対応になっていって、明らかに喘ぎ声が演技になっていき、写メ日記とはまるで違う体験が繰り広げられていった。
そして悟った。
「突貫工事的にプルンプルンにした唇では全然風俗楽しめない…」
と。
そして「まだ早い」と言わんばかりに指を突っ込まれ(それでも指舐めれたのでよかった。たぶんキスはお預けのサインだったのかも)けれどもやはりどんどんあっさりした対応になっていって、退店と共に風俗代をドブに捨てたような感覚になっていったのであった。
「この3万円でラブドール買ったほうがマシだった」
「今日から毎日リップクリーム塗る」
風俗に行って決まった。次にするべきことが決まった。それは「今日からリップクリームを毎日塗る」ということ。
「今日はソープにいく」「今日しかない」という日は突然やってくる。
それまでに徹底的に毎日唇を整えておく必要がある。
そして「風俗代をドブに捨てた」「風俗嬢の方の接客が塩対応だった」「風俗嬢の方のキスが下手だった」などというブーメランが起こらないようにする必要がある。
「こっちに原因があるんだ」と。
もう風俗代をドブに捨てない。
1回1回を圧倒的な満足体験にしてみせる。
その原因はどんどん己から消えてもらう。
そしてどんどんパワーアップしてやる!
さらば、ガサガサの唇よ。
さらば、ベコベコの唇よ。
さらば乾いた唇よ。
ようこそ、プルンプルンの唇よ!
ようこそ、
「ディープキスをし続けても潤いを保ち続けてくれる」普段から整備された正真正銘の唇よ!
そのためにリップクリームが必要だ!
もう肌身話さない!
常にポケットに!
そして常に取り出せるように!
そして最高に気持ち良いディープキスを楽しむのだ!!
全ては風俗マスターになるために。
